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100題で、総士と澄美。


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ジークフリード・システムへの搭乗が決まってから、総士はシステムの扱い方を学ぶための講習を受けていた。
情報処理はCDCでも行っていたが、複数のデータを同時に処理しなければならない分、難易度は比べものにならないくらい高い。
さらに現段階ではアインとツヴァイしか完成していないものの、ファフナー全十二機を戦略的に展開するための、兵法も学んでいる。
文化祭が終わって、ようやく暇になったと思いきや、総士の生活は相変わらず忙しいままだ。

「総士君、お父さんが呼んでたわよ」
「司令室ですか?」
「ええ。あなたもお父さんも、根を詰めて仕事をし過ぎよ。ほどほどにして、体調を崩すなんてことがないようにしなさい」

教師であり、クラスメイトの母親でもある要澄美には、小さい頃から知られているせいか、正直頭が上がらない。
しかし自分のことはともかくとして、大して年の変わらない公蔵のことも説教の範疇に入るとは、女にとって男はいつまで経っても子供だということなのだろう。
CDCに配属されている女性三人のうち、既婚者は二人。
主婦の方々は、男やもめの生活状態が気になって仕方ないらしい。
島の責任者であることを免罪符に、仕事に没頭してしまう父である。
総士も事情を知っている分、他の人のような歯止めもない。

「わかりました。せいぜい気を付けておきますよ」

少し休めと言ったところで、聞くような人でないのは重々承知しているから、せめて今夜くらいはいいものを食べさせてやるかと、夕食の献立を考える。
冷蔵庫の中にはどうせろくなものが入っていない。
今日は早めに切り上げて商店街に寄って帰るかと、予定を立てた。
どこかの誰かでないから家事は得意ではないのだが、一応は父子家庭育ち、簡単なことなら必要上できるのである。

「その皮肉めいた言い方……。もっと子供らしくしてた方が、可愛く見えて得よ」
「可愛く、ですか……」
「付け入るだけの隙があった方が、周りも手を貸しやすいでしょう? 何でも完璧が美徳ってわけじゃないんだから。よーく覚えておきなさい」

新国連の間者が入り混じる中、弱みになるものは極力少ない方がいいと思う。
けれどファフナーに乗れない大人たちが、子供たちを犠牲にしていると、そのことに罪悪感を感じているのもまた事実だった。
生命を削って戦う子供たちに対して、大人たちがしてやれることが、あまりに少なすぎる。
彼らの生命に報いるだけの価値が自分たちにあるのか、もらったものに見合うだけのものを返せているのか、自信がないのだ。だからこうして世話を焼きたがるのだろう。

「わかりました。ご忠告痛み入ります」
「もう、これだから可愛くないって言うのよ」

総士も一度、ファフナーに乗った身だ。遺伝子の変質はすでに始まっている。
おまけにジークフリード・システムは搭乗者の身体に、痛みを溜め込む性質があるという。
自分も果林も、いつまで生きられるかわからない。
こうして身近な人の、生命の勘定をしなければならないのは嫌だった。

「それじゃあ、失礼します」

CDCを後にする。
父の用件はどうせ、システムのことだろう。
最近、しなくてはならないことが多くて、身の回りが慌ただしい。
今日は早く帰宅できるようにと、総士は足早に歩いた。

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続く
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