近況報告、二次加工品の展示など
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100題で、総士と甲洋。
一応、前の話の翌日ですが、甲洋は下手すると黒っぽくなりそうで怖いね……。
別に甲総なんて狙ってないのにさ。
一応、前の話の翌日ですが、甲洋は下手すると黒っぽくなりそうで怖いね……。
別に甲総なんて狙ってないのにさ。
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海に囲まれた島で、山の頂から見ることのできる黎明はとても綺麗だ。
空と海とがその境を接する水平線は、緩い曲線を描く。
地球が丸いことなんて、コペルニクスやガリレオに言われなくたって、見てわかることだった。
一人で上ると危険だからと名づけられた「ひとり山」に、雪のちらつく新年、幼なじみが総士を引っ張って行ってくれた。
朝靄が揺らぐ――。
一日の始まりと共に、口にする言葉がある。
「おはよう」
「……おはよう」
教壇脇の引き戸から、すぐ目に付く位置に総士の座席はある。
右から二列目の一番前。
黒板に近いのはいいが、近すぎてかえって端の方が見えずらい。
教師が授業を始めれば、それが障害物になって、文字が読み取りづらいという、なんとも不便な位置だ。
ついでに戸をくぐってきた相手と真っ先に目が合う、嫌なポジションでもある。
「あれー、果林。もう調子いいんだ?」
窓際の席から、遠見真矢が手を振った。
総士の前を通り過ぎていった果林が、昨日までの憂鬱さを全く感じさせない調子で、それに応じた。
「うん、平気平気。季節の変わり目なんかに風邪を引くもんじゃないわねぇ……。治りが遅いんだもの。学校結構休んじゃったし……、文化祭の準備ってどれくらい進んでる?」
彼女の劇での配役は、シンデレラに魔法をかける魔法使いだ。
学校が始まって以来休んでいた彼女は、練習に参加していない。
「劇は夏休みに暗譜してきたところの、台詞合わせに入ったよ」
一学年一クラスの竜宮中学校が文化祭をして、それなりに盛り上げようと思えば、出し物の数が明らかに足りない。
当日は商店街などから出店がやってくるが、ステージ発表だけでなく、クラスを二つに分けて展示班も作る。
何かしら部活に所属している者は、そっちの方でも作業に参加しなければならない。
文化祭の次の日は、体育祭もあるのだ。
九月に入ってからの学校は、お祭り騒ぎを通り越して、てんてこ舞いといった方がよかった。
掛け持ちは当たり前で、生徒会の仕事があるからといって、分担を減らしてもらえるわけでもない。
夕食間近の帰宅、家での内職、授業中の居眠り――、本番が終わるまでそれが続く。
「……総士、大丈夫? 総士がそんなにうとうとしてるところって、初めて見たよ」
いつのまに昼休みになったのかは定かではないが、自分はすでに昼食を片付け、教室の喧騒を子守唄に意識を飛ばしていたらしい。
甲洋が持ち主不在の席を陣取り、総士の顔を覗き込んでいた。
「……ああ」
「おーい、ちゃんと起きてるか?」
瞬き一つで返す。
酷く咽が渇いて、声を出すのが億劫だった。
何か夢を見ていた気もするのだけれど、霞がかかったように思い出せない。
「……しょうがないなぁ」
そんな総士に、甲洋もまともな反応を期待するのは諦めたようだった。
それでも総士の側から離れるというわけではなく、横に座ったまま違う方向を見ていた。
自分が何でこんなに眠いのか、それすらも曖昧だ。
靄の中を深みへ深みへと、進んでいく。
「危ないから、一人で行っちゃダメよ」
女の人――、母親だろうか。
物心つく前になくなってしまったから、写真で見ただけで、声の調子なんて本当は覚えていないのだけど。
どうしてそんなことを言うのかがわからない。
指先がかじかんで、感覚が湧かない。
そんな自分の手を、誰かが引いていく。
それは酷く温かだった。
「剣司、あんたって奴は! 今日という今日こそ、根性入れ直してやるよ!!」
教室の喧騒。
「姉御、勘弁してくれよぉ……」
「お待ち!」
逃亡を図った剣司を、咲良が追いかけていく。
「二人とも待ってってば!」
衛がそれに追随し、調停に入るのはいつものことだ。
それで剣司の被害を防げたことなど、本当に数えるほどしかなかったが、喧嘩するほど仲がいいという言葉通り、あれも一種のコミュニケーションなのだろう。
潜っていた意識が表面に浮上する。
「女子って怖いな……」
「そう? ふわっとしてて、可愛くて、守ってあげたくなると思うけど?」
咲良のあの剣幕を見て、尚且つそう言えるのなら、彼はなかなかの大物だ。
けれど、総士の心は半分別のところにあった。
「僕にはよくわからない……。守るだなんて、重たいだけじゃないか? みんなそんなに万能じゃないのに……」
「……総士は相手に自立を求めるけど、自分自身にも厳しいから。一人で何でも背負い込もうとするのは悪い癖だよ」
夢現の総士の言葉を、甲洋は器用に汲み取っていく。
「俺にも何か、手伝えることはある?」
"Can I help you."は一つの決まり言葉だ。
総士はしばし考えた。
「……生徒会の仕事、蔵前が休んでたから全然進んでないんだ」
「じゃあ放課後、俺が手伝うから。総士はあまり無理しないようにしなよ」
自分だって、王子様役の練習があるだろうに。
人のものまで何でもかんでも背負い込むのは、そっちじゃないか。
朝靄の中で、手を引かれる。
言える言葉なんて一つしかなかった。
「……ありがとう、甲洋」
「どういたしまして」
首を傾げながら、彼はそう言って微笑んだ。
海に囲まれた島で、山の頂から見ることのできる黎明はとても綺麗だ。
空と海とがその境を接する水平線は、緩い曲線を描く。
地球が丸いことなんて、コペルニクスやガリレオに言われなくたって、見てわかることだった。
一人で上ると危険だからと名づけられた「ひとり山」に、雪のちらつく新年、幼なじみが総士を引っ張って行ってくれた。
朝靄が揺らぐ――。
一日の始まりと共に、口にする言葉がある。
「おはよう」
「……おはよう」
教壇脇の引き戸から、すぐ目に付く位置に総士の座席はある。
右から二列目の一番前。
黒板に近いのはいいが、近すぎてかえって端の方が見えずらい。
教師が授業を始めれば、それが障害物になって、文字が読み取りづらいという、なんとも不便な位置だ。
ついでに戸をくぐってきた相手と真っ先に目が合う、嫌なポジションでもある。
「あれー、果林。もう調子いいんだ?」
窓際の席から、遠見真矢が手を振った。
総士の前を通り過ぎていった果林が、昨日までの憂鬱さを全く感じさせない調子で、それに応じた。
「うん、平気平気。季節の変わり目なんかに風邪を引くもんじゃないわねぇ……。治りが遅いんだもの。学校結構休んじゃったし……、文化祭の準備ってどれくらい進んでる?」
彼女の劇での配役は、シンデレラに魔法をかける魔法使いだ。
学校が始まって以来休んでいた彼女は、練習に参加していない。
「劇は夏休みに暗譜してきたところの、台詞合わせに入ったよ」
一学年一クラスの竜宮中学校が文化祭をして、それなりに盛り上げようと思えば、出し物の数が明らかに足りない。
当日は商店街などから出店がやってくるが、ステージ発表だけでなく、クラスを二つに分けて展示班も作る。
何かしら部活に所属している者は、そっちの方でも作業に参加しなければならない。
文化祭の次の日は、体育祭もあるのだ。
九月に入ってからの学校は、お祭り騒ぎを通り越して、てんてこ舞いといった方がよかった。
掛け持ちは当たり前で、生徒会の仕事があるからといって、分担を減らしてもらえるわけでもない。
夕食間近の帰宅、家での内職、授業中の居眠り――、本番が終わるまでそれが続く。
「……総士、大丈夫? 総士がそんなにうとうとしてるところって、初めて見たよ」
いつのまに昼休みになったのかは定かではないが、自分はすでに昼食を片付け、教室の喧騒を子守唄に意識を飛ばしていたらしい。
甲洋が持ち主不在の席を陣取り、総士の顔を覗き込んでいた。
「……ああ」
「おーい、ちゃんと起きてるか?」
瞬き一つで返す。
酷く咽が渇いて、声を出すのが億劫だった。
何か夢を見ていた気もするのだけれど、霞がかかったように思い出せない。
「……しょうがないなぁ」
そんな総士に、甲洋もまともな反応を期待するのは諦めたようだった。
それでも総士の側から離れるというわけではなく、横に座ったまま違う方向を見ていた。
自分が何でこんなに眠いのか、それすらも曖昧だ。
靄の中を深みへ深みへと、進んでいく。
「危ないから、一人で行っちゃダメよ」
女の人――、母親だろうか。
物心つく前になくなってしまったから、写真で見ただけで、声の調子なんて本当は覚えていないのだけど。
どうしてそんなことを言うのかがわからない。
指先がかじかんで、感覚が湧かない。
そんな自分の手を、誰かが引いていく。
それは酷く温かだった。
「剣司、あんたって奴は! 今日という今日こそ、根性入れ直してやるよ!!」
教室の喧騒。
「姉御、勘弁してくれよぉ……」
「お待ち!」
逃亡を図った剣司を、咲良が追いかけていく。
「二人とも待ってってば!」
衛がそれに追随し、調停に入るのはいつものことだ。
それで剣司の被害を防げたことなど、本当に数えるほどしかなかったが、喧嘩するほど仲がいいという言葉通り、あれも一種のコミュニケーションなのだろう。
潜っていた意識が表面に浮上する。
「女子って怖いな……」
「そう? ふわっとしてて、可愛くて、守ってあげたくなると思うけど?」
咲良のあの剣幕を見て、尚且つそう言えるのなら、彼はなかなかの大物だ。
けれど、総士の心は半分別のところにあった。
「僕にはよくわからない……。守るだなんて、重たいだけじゃないか? みんなそんなに万能じゃないのに……」
「……総士は相手に自立を求めるけど、自分自身にも厳しいから。一人で何でも背負い込もうとするのは悪い癖だよ」
夢現の総士の言葉を、甲洋は器用に汲み取っていく。
「俺にも何か、手伝えることはある?」
"Can I help you."は一つの決まり言葉だ。
総士はしばし考えた。
「……生徒会の仕事、蔵前が休んでたから全然進んでないんだ」
「じゃあ放課後、俺が手伝うから。総士はあまり無理しないようにしなよ」
自分だって、王子様役の練習があるだろうに。
人のものまで何でもかんでも背負い込むのは、そっちじゃないか。
朝靄の中で、手を引かれる。
言える言葉なんて一つしかなかった。
「……ありがとう、甲洋」
「どういたしまして」
首を傾げながら、彼はそう言って微笑んだ。
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Comment
Re:お久しぶりです。
Air様、お久しぶりです。
ご無沙汰しておりましてすみませんでした……。
種のログだけ残しておいてもよかったのですが、そうすると続きは書かないのかとか、聞かれるとつらいなぁと思いまして、丸ごと消してしまいました……。
今後更新する予定は本当にないですし、種での活動は自分の中でまだ、未消化な部分が多いので開き直れないのです。
鮒サイトに変更してしまったので、一応リンクは外させていただきました。
種作品はもう置いてないし、仕方がないかなぁと……。
鮒の方でもよろしければ、また通ってやってくださいー。
前のときはキラアスってジャンルが明確だったけど、鮒はもう総士が書ければそれでいいって感じですね……。
食指に合うものがあればいいんですけど。
種時代の人がどれくらい残ってくれるんだろうと思ってたので、コメントを残していただけたのは、結構うれしかったです。
ありがとうございました。
ご無沙汰しておりましてすみませんでした……。
種のログだけ残しておいてもよかったのですが、そうすると続きは書かないのかとか、聞かれるとつらいなぁと思いまして、丸ごと消してしまいました……。
今後更新する予定は本当にないですし、種での活動は自分の中でまだ、未消化な部分が多いので開き直れないのです。
鮒サイトに変更してしまったので、一応リンクは外させていただきました。
種作品はもう置いてないし、仕方がないかなぁと……。
鮒の方でもよろしければ、また通ってやってくださいー。
前のときはキラアスってジャンルが明確だったけど、鮒はもう総士が書ければそれでいいって感じですね……。
食指に合うものがあればいいんですけど。
種時代の人がどれくらい残ってくれるんだろうと思ってたので、コメントを残していただけたのは、結構うれしかったです。
ありがとうございました。
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